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美は、命を、輝かせる。

「designdom」とは造語です。英語の辞書にはありません。
この造語のきっかけは、「design」という言葉の意味変化を知ったからです。

  「現代デザインを学ぶ人のために」の著者、嶋田厚氏・藤田治彦氏がこの本のなかで書かれていることですが、
「design」とは、かつては「神の構想」であり、「designer」とは、造物主、つまり「神」を指していたそうです。

  現在の意味への変化は、18世紀末のことで、「design」という言葉の「使われ方」が一変したそうです。
 
つまり、この変化は「God's works」,「God's creative」だった
「design」が、「People's works」,「People's creative」になったというわけです。
 
この言葉の変化は、18世紀末ですから、イギリスの産業革命の初期頃に重なります。
世界が、KINGDOMという君主制から民主主義への移り変わりの時期でもあり、
同期して「design」の語釈(解釈)が変わったからではないかと思います。
 
そして、市井の人が、大きな成功を収めることができるようになりました。

  イギリスに産業革命をもたした、水力紡績機の発明家リチャード・アークライトという人は、
綿紡績工場の経営で成功を収めた人物です。
彼はその日暮らしの貧しい家庭の13番目の子供だったそうです、
ゆえに教育を受けることもなく生涯を通じて字も書けない無学文盲でした。
蒸気機関車の実用化で名を成した、ジョージ・スチブソンも、貧しい炭坑夫の子であり、
この時代の立身出世の代表ともいえる人ですが、無学であり、18歳からの夜学から身を起こしたといいます。
 
つまり、産業革命によって、
「古い富(KINGDOM)」から、「新しい富(designdom)」への移行があったといえます。
 
古い富とは、王侯貴族の土地(農地。穀物という富)からの搾取であり、
それは侵略であり「働かない」というものでしたが、
新しい富は、工業化という、何かしらのために「働く」ことであり、モノづくり(design)です。
 
それは、Works、力の発揮です。
 
英語「Work」のコアイメージ(根源的意味)は、
そのものの持っている力、本来の力を発揮する、あるいは、発揮させるという意味だそうです。
 
すこし面白いな、と思うことは、やはり、神という存在に関係しているのですが、
一世紀前に、ピューリタン革命で斬首刑にあったイギリス国王・チャールズ1世(1600-1649)が信奉した「王権神授説」です。
 
「王権神授説」とは、王の権力は神から授けられたものであり、
国王のなすことに、国民は服従すべきであるという絶対王政の正当化を計るもので、KINGDOMという感じです。
 
このチャールズ1世は、その強圧的な態度によって議会との内戦となりイギリス国王として斬首刑にあい、
結果としてフランス革命より一足早いイギリス民主化への流れへの契機となります。
 
支配者から、民衆へと、世界を動かす中心が移った時、
「design」という言葉の意味が代わり、「KINGDOM」から「designdom」という世界に変わったのではないか、
そして、現在でも「designdom」は発展継続していると思うのです。

 
パーソナルコンピューターは、プロとアマチュアの垣根を壊し、
3Dプリンターの登場は、モノづくりそのものを大きく変えようとしています。
 
今や、あらゆる人、あらゆる会社は、「designer(創造者)」であり、「design company」となっていくと言われています。
今、注目されているデザイン思考(Design Thinking)の高まりもそうした流れの一環です。
 
そして、ブランドとは、「design company」のことあり、
私たちは、「designdom」という「創造競争の世界」に住んでいるようです。